「冈田さん……」深夜の住宅街を歩く冈田刑事は车の中から呼びかける声に近づいた。と小さく锐い铳声、冈田は歩道に倒れた。车から降りたった青年、伊达邦彦であった。冈田のレボルバー拳铳と警察手帐をポケットにつっ込み、死体を车の后部に押しこむと、シボレーはすごいスピードで走り出した。引金を引いてから一分とたっていない。--伊达邦彦は大学院の学生だった。ハードボイルド文学の杉村教授のアルバイトをする傍ら、论文をアメリカのある财団の主催するコンクールに出して留学の机会をねらっていた。秀才、勤勉、诚実というのがもっぱらの评判だ。サッカーで锻えた强靭な体、巧みな射撃术、冷彻无比な头脳。その彼に完全犯罪の梦がくすぶり始めていた。动机はない。杀す瞬间のスリルと杀人の英雄らしさを味わいたい、それだけだった。女にしてもそうだ。彼は决して一人の女を三度以上爱さない。妙子も例外ではなかった。--乗り舍てられたシボレーから冈田の死体が発见された。捜査网がはられた。新米刑事真杉もその一人だ。伊达は冈田のレボルバーと警察手帐を巧みに使い、国际赌博団の根城「マンドリン」を袭っては留学资金をためていた。数日后、伊达は血眼になって彼を捜している赌博団の用心棒、三田と安に出会った。行きずりのゲイボーイの手をつかむと、伊达は路上のキャデラックで逃げた。场末の川端で三田に追いつめられた。一瞬ゲイの手が离された。悲鸣をあげて駈け出したゲイを追う三田は伊达の射つレボルバーに倒れた。捜査は进まなかった。当局は见当违いのやくざ関系を洗っていた。一人真杉にはこれが意外な者の犯行と思えた。新闻でみた杉村教授の现代犯罪论が真杉の気をひいた。教授を访れた真杉は伊达を见てあっと叫んだ。この男だ。この男こそ教授の云う「时代が创造した新しい犯罪者」に他ならない。犯人は伊达だ、真杉は信じた。留学资金をかせぐ伊达の最后の仕事は大学の入学金を夺うことだった。伊达は手冢という男と知り合った。二人は大学を袭った。筋书通りに运んだ。逃走する伊达には超短波でパトカーの指令が手にとるように分った。帰途、もはや不要になった手冢は车もろとも海底深くぶち込まれた。金は二千万円あった。下宿に帰るとアメリカに出した论文がパスして、ただで留学出来る旨の通知が来ていた。警察は真杉の先导で伊达の下宿を袭ったが无駄だった。翌日、伊达は空路アメリカに向った。茫然と见送る妙子を真杉达は追った。「完全犯罪なんて成立せんよ。电话一つであいつは死刑台さ……」真杉の先辈がつぶやいた。